ドイツと日本の展示会における違い Vol.3 展示会に対する考え方の違い

第三弾は『展示会に対する考え方の違い』についてご紹介します。
今回もドイツを軸にしながら考えていきたいと思います。

はじめに

海外展示会への出展経験豊富な会社さんに「日本の展示会との大きな違いはなんですか?」と聞いてみると、皆さん口を揃えてこのように答えます。

1.国際色豊かで規模が大きい
2.ブースで商談に繋がる可能性が高い

今回はこの2点について考えてみましょう。

国際性と規模感

1.国際色豊かで規模が大きい

実際にドイツと日本の展示会の出展者数とその内訳を比較して見てみましょう。



◎【Heimtexitil】ホームテキスタイル関連・フランクフルト
◎【ambiente】消費財展示会・フランクフルト
◎【Interior Lifestyle】インテリア・雑貨関連の展示会・東京
◎【東京ギフトショー】インテリア・雑貨関連の展示会・東京

出展者の数、来場者の数だけを見てみると、そこまで大きな差はないように見えます。
内訳を見ると、来場者・出展者ともにドイツの方が国外からの比率がはるかに高くなっています。

【ambiente】の来場者の国籍数ではなんと167ヵ国にも昇ります。
【東京ギフトショー】の来場者国籍数は残念ながらデータがありませんでしたが、
【Interior Lifestyle】の33ヵ国と比較するだけでも、ドイツの展示会の方が国際色豊かであると言えそうです。

もちろん展示会ごとによって専門性の高い展示会などもあるので、”規模が大きい”とは一概には言えませんが
Vol.1の会期時間の長さ」、「Vol.2会場の広さ」という点を鑑ると、ドイツの方が来場者を受け入れるキャパシティという意味で”規模が大きい”と言えるでしょう。

商談につながる

2. 実際に商談につながる可能性が高い、という点については本当にそう言えるのでしょうか?

海外展示会に出展した企業さんからの経験談によると、日本と海外では展示会の役割が違うとよく耳にします。

国内展示会の役割

新しい製品・サービス・技術などの情報交換の場して利用

新規顧客に対しては、会期中に獲得した名刺の数を成果の対象とする

既存顧客に対しては、事前にアポを取り、別途会議室を借りて商談を行う

⇒結果、展示会終了後時間をかけてビジネスへと発展


海外展示会の場合

①新製品のPRであるだけでなく、商談の場として利用

新規顧客に対しては、積極的にブースで商談を行い、その場で価格の交渉を行う

既存顧客に対しては、関係強化を図りお酒を交えながら会話を楽しむ

⇒結果、展示会中にどれだけ実のある話を出来たかどうかが、その後のビジネス成果へ直結
 よりスピード感を重視した対応が求められる

実際のところ

これまでの内容で、なるほどそうかーと思う人もいるかもしれません、、

ちょっと待ってください!
これだと海外と日本の展示会の本質的な違いにはなりません。

なぜなら、ドイツで開催される国内顧客をターゲットにした展示会では、
日本同様に、既存顧客との関係強化や情報交換の場として活用されることがあります。

逆に、ドイツの企業が日本の展示会に出展した際には、積極的な商談の場としてみているでしょう。

これは展示会の開催場所の違いではなく、自分たちから見て、海外か国内かという違いにすぎません。

概して、ドイツに限らず、海外の展示会、とりわけ国際色豊かで規模が大きい展示会については、
その規模感と国際性に比例して、商談の機会・重要性が高まるのではないでしょうか。
少なくとも、ドイツには、世界各国の中でも国際色豊かで規模の大きな展示会が多くある、というのは間違いありません。

違和感の正体

それでも、”海外の展示会と日本の展示会で大きく異なる” と感じるのはなぜでしょうか?

ここからは個人的な見解ですが、
「展示会に対する考え方の違い」ではなく、
日頃のビジネスにおけるコミュニケーションの仕方」にあると思います。
すなわち、日本における名刺交換の役割に集約されるのではないでしょうか。

私も仕事柄海外の展示会によく行くのですが、そこではいろんな人に話しかけられ、ビールやワインをごちそうになり、製品の説明を受けたりします。
しかし、話して5分もたたないうちに「名刺を下さい」と言われたことは一度もありません。
業界の関係者でない私からすると、いつ自分の正体がばれないかとひやひやしながら会話をしますが、向こうは変わらずニコニコと話しかけてくれます。

一方で、国内の展示会を見学していると、すぐに「お名刺を頂戴できますか」と聞かれます。
それによって、本当に製品に興味があったときも、BtoBの展示会で正体がばれて一般消費者とわかると、一気に塩対応をされたことも何度か経験しました。

結論

日本語だろうと、英語・ドイツ語だろうと、
普段から名刺(肩書)を確かめてからでないと相手との距離感をつかめない(対応を変えてしまう)コミュニケーションの取り方をしている日本の出展者と、逆に普段から母国語でないドイツ語を話す日本人に対してもニコニコと話し続けるドイツの出展者、そこには来場者に対する姿勢という点において、言葉以上の大きな差異があるのではないでしょうか。

ドイツを例にしてみましたが、名刺⇒会話を始めるというやり方は世界的にみても日本以外はほとんど見られない商習慣(ビジネスにおける会話の展開)であるといえます。

当初の題名と少しずれますが、本来的には「展示会の考え方の違い」よりも、
日頃のコミュニケーションの取り方・姿勢について常に意識することが、
”商習慣の違い”を埋めていく鍵になるのではないかと思います。

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