ドイツと日本の展示会における違い Vol.1 会期の長さ


前回の投稿で予告していた通り、『ドイツと日本の展示会における違い』というテーマで
今週からこのサイト上で記事を定期配信をしていきます。

今日はその第一弾『会期の長さの違い』についての記事となります。


実際の見本市で長さを比較


会期の長さが違うと言いますが、実際にどれくらい違うのでしょうか?
実際に行われている展示会のデータを元に検証してみましょう。

日本の展示会は、一般的に3-4日間開催のものが多いですが、中にはもう少し長めのものもあります。
会期が長めの展示会に関して日独での会期の長さを下記に比較してみました。



3年に一度、あるいは4年に1度といった開催頻度も同じの同業種の展示会であるにも関わらず、
相対的にドイツの展示会の会期が長いのが分かって頂けると思います。


長さが違う理由


ではなぜ、会期の長さが違うのでしょうか?
長さが違う理由に関して個人的な見解を以下にまとめてみました。

●会場レンタル費の差

ドイツの場合は、一部の例外もありますが、見本市主催者が見本市会場を所有している場合が多く、
一方日本では主催者は会場を借りる前提になっています。
当然、日本の場合には会場を長く借りれば借りるほど場所代が嵩みます。
日本の主催者にとっては、会場を長く借りることはコスト高に直結しているので、
会期を長くしにくい理由の一つだと思います。

●出展者数の違い

陸続きで複数の隣国と国境を接し、ヨーロッパの中心にあるドイツの見本市は、
その地の利からも来場者と出展者の数が多いです。
ゆえに、日本の様に2-3日という会期の短さだと、単純にまわりきれなくなります。
出展者数の多さも会期の長さの理由の一つとなっています。

●産業としての本気度の違い

極端な言い方かもしれませんが、ドイツ人はセールス=メッセと考えていると言っても過言ではありません。
また、会期中は街中のホテル・レストランなどが世界中のビジネスマンで賑わいます。
観光要素の比較的乏しいドイツにとって、見本市は国や街に潤いをもたらしてくれる、
なくてはならない産業の一部なのです。

レストランやデパートの店員さんなんかと話していると、
『その時期にはメッセ(Messe、見本市)があるから忙しくなるよ』とか
『その時期はメッセだから予約は早めに取ってくれないと難しいよ』などという会話が頻繁にかわされます。

見本市は開催都市に潤いをもたらしてくれる存在です。
そういった理由から、会期を長くしやすい、あるいは長くなりやすい背景があると思っています。

●コミュニケーション手法の違い

この主張に関しては特に根拠があるわけではなく、何度も現場を見てきた中で私があくまで肌で感じたことです。
しかし、誤解を恐れず私の独断と偏見による各国の見本市のイメージを書いてみます。

日本=製品の説明をする場

ドイツ=世界中の人達とのコミュニケーションおよび親睦を深める場

もちろん、出展者によってや出展製品の分野などによって見本市出展において
何をどこまで重視するかの度合いは変わってくるでしょう。
しかし、ブースを見ていると上記のような出展に向けての意識の違いを傾向として感じることが出来ます。

ブースの構成を見ていると、ドイツ企業の製品展示エリアの少なさにびっくりすることがあります。
製品展示エリアがちょっとしかなく、逆に商談エリアの面積が非常に大きいのです。
最初の頃はちょっとしたカルチャーショックでした。

ビールなどアルコール類や軽食を楽しみながらコミュニケーションを楽しんでいる人々で賑わっています。
明らかにコミュニケーションを重視しているのが分かります。

必然的に、クライアントや来場者のブースでの滞在時間も長くなります。
それが、会期の長さとも関係しているように感じます。


会期の長さの違いがもたらすもの


●デザイン

長さが違うのは何も会期だけではありません。施工や撤去の期間も違います。

例えば、ドイツの印刷機器関連の見本市drupa2016の時には20日間以上の施工期間がありました。
一方、同業種の日本国内の展示会であるIGAS2018の際には5日間しか施工期間がありませんでした。
施工期間の長さが全く違うので、施工に際して現場で出来ることも当然変わってきます。
以下に簡単に施工方法の特徴の違いをまとめてみました。

日本…ベニヤや表具など軽くて簡易的な素材。天吊などは一部例外を除き不可。短時間で設営撤去出来ることが最優先される。

ドイツ…化粧板、塗装などを用いたがっしりした作り。天吊り、2階建てなど高さを生かせる。自由度高め。設営に時間がかかる。

設営方法や素材の違いによって、デザインの違いも生まれます。
設営期間が長い方が、自由度が高く色んなことが出来るというのが主な理由です。


●開催都市への経済効果

見本市開催中は、ドイツのホテルは普段の料金の3倍が当たり前です。
それでも泊まる人が沢山いるのだからすごいです。
街中のレストランは、ビジネスマンの予約でいっぱいです。
あまり美味しくない所は空いてたりしますが…。

日本の場合は、開催都市にもたらす経済効果と言ってもたかがしれているかもしれませんが、
会期の長さが違えば当然、そこで開催都市にもたらされる経済効果にも差が出てきますよね。



部分的に主観的な意見も含まれていたかと思いますが、
今日は会期の長さの違いについての考察でした。


次回は『会場の広さの違い』について7月1日を予定しています。
どうぞお楽しみに。



Musashi

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