ドイツと日本の展示会における違い Vol.5 ブース内の空間に対する考え方
第5弾は、ブース内の空間に対する考え方の違いというテーマで書いていきます。
日本とドイツでブース内の空間の使い方には明らかな違いがあります。しかし、ただ単にブース空間の使い方に差異があるという事実だけを比較した所で、皆さんに役立つ情報にはなりません。
差異があるというのはあくまで結果に過ぎず、そこからもう一歩踏み込み、その差がどうして生まれるのか?という考え方の差異まで検証し一緒に考えて頂くことが、初めて皆さんのブース作りにも転用できる有益な情報になると信じています。
ブース空間の使い方の傾向
まずは、実際に現場で撮影した写真を元に空間の使い方の違いを感じてみましょう。
いかがでしょうか?
日本国内でもドイツでも数多くのブースを見てきた私の個人的見解では以下のような明らかな傾向があると感じています。
🇯🇵…製品展示スペース優先
🇩🇪…商談スペース優先
日本での展示会に慣れた我々の感覚からすると、ドイツの展示会における商談スペースは広すぎじゃないか?と感じてしまうかもしれません。
逆に、製品展示スペース少なすぎない?と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ドイツの展示会においては、各出展者のブース面積が大きいということも影響していると思いますが、ブース全体の中に占める商談スペースの割合が、日本のそれと比較すると相対的に大きいということが何となくご理解頂けるかと思います。
空間の使い方の差異に見る考え方の違い
こうしたブース空間の使い方の違いは一体どこから生まれてくるのでしょうか?
日本とドイツで数多くの展示会ブースを目にし、その違いを肌で感じてきた私の経験と主観から、展示会に対する捉え方の違いを敢えてざっくりと一般化してみます(笑)。
🇯🇵…製品PRの場、名刺交換の場
🇩🇪…おもてなしの場、コミュニケーションの場
これはあくまで、そういう傾向があると私が感じているというお話で、実際には白か黒ではなく無数のグラデーションが存在します。当然、日本の展示会でもおもてなしやコミュニケーション重視のブースもあり、ドイツの展示会でも製品PR最重視のブースもあります。展示会の分野によって、出展企業によって、あるいは担当者によっても変わってくるでしょう。しかし、やはり全体としての傾向は存在していて、その考え方の違いを検証することは、効果的な出展を考えていく上での手助けとなってくれるはずです。
日本🇯🇵
製品のPRや訴求が最重視される傾向が強いと感じます。
『今回はこの新製品が目玉なので、これをブースの一番目立つ位置にレイアウトしたい』というようなお話をよく聞きます。
一方で、商談スペースはそこまで重視されていないように感じます。
商談スペースは必要ない、あるいは出来るだけ回転を早くしたいとおっしゃる出展者様も少なからずいらっしゃいます。
日本国内の展示会は展示ブースの面積が小さいということも要因となり、スペースの使い方の優先順位の結果としてそうなってしまうのかもしれません。
実際に、現場では立って商談をしている人達もよく見かけます。
日本では一般的に名刺獲得数=展示会の成果と考えられている所からも、
すぐ目に見える形での成果を求める傾向があると強く感じます。
展示会におけるコミュニケーションでは、質よりも量を求めているように見えます。
ドイツ🇩🇪
商談スペースの広さは、出展者がコミュニケーションを最重視していることの一つの象徴です。
ドイツでは広い商談スペースで、ビールやソフトドリンクなどを飲みながら笑顔で会話を楽しんでいる光景をよく見かけます。
広い商談スペースや、バーカウンターなどはリラックスしながらブースでの一時を過ごしてもらいたい、出来るだけのおもてなしをしたい、
という出展者の想いを具現化したものだと感じます。
またそういった”心地よい”体験をしてもらうことが、長い目で見た場合に良質なビジネス関係構築に繋がると多くの出展者が信じているのだと思います。
ドイツのこういった空間作りに、日本人である私が”おもてなし”の心を感じたのは、興味深いことです。
最後に
どちらの手法がより優れているということを主張したい訳ではなく、『郷に入りては郷に従え』という諺にもあるように、現地で受け入れられやすい展示手法が存在することは確かです。
実際に、ドイツでの展示会に慣れている日本企業の方々は、その辺りをとてもよく熟知されているなと、我々の目から見ていても感じます。日本酒などを振る舞って、世界中のバイヤーの方達と楽しい会話を楽しまれている印象を受けます。
とあるドイツの出展企業の方が、『私達は、自分の会社のファンを増やすために出展しているのだ』と言っていたことを思い出します。
ドイツでの出展を通して、御社のファンを増やされてはどうでしょうか?